afurikamaimaiのブログ

テキスト打ちのリハビリのはずだったが、今は路頭に迷ってる

5つの習慣

ふたつ足りないわけではなく、この本によるところのおすすめ思考法である。

 

 

Q思考――シンプルな問いで本質をつかむ思考法

Q思考――シンプルな問いで本質をつかむ思考法

 

 

 

世界を切り拓くのは「美しい質問」だぞ、という内容。

訳者あとがきによれば

「なぜ」「もし~だったら?」「どうすれば」=理由を探り、仮説を立て、方法を考える、そのやり方を鍛えましょう~~という内容なんですが、とても面白いです。

 

前半は何だか読んでるうちに「地球ドラマチック」の渡辺徹の声が聞こえてきそうな感じで、人名の羅列が延々続いて正直面白くなかったです。

質問がすばらしいとこんなに上手く行くんだよ、って言う成功した人の紹介の連続。

義肢づくりに革命をもたらしたヴァン・フィリップスのエピソードは面白かったけど、ほかはよく聞く名前だなあ(ベゾス・ブリン・ジョブズとか食傷気味)・・・っての羅列か、全く知らない人をチラッと紹介する感じでぜんぜん頭に入ってこない。

そんな中で惹きつけられたのが、ニューヨークの荒廃した公教育を立て直したデボラ・メイヤーの話(P.95~)でした。

ここで彼女がやったというのがタイトルの5つの思考習慣。

 

  • 証拠:何が「真」で何が「偽」かをどう知るか。その証拠は信頼できるか
  • 観点:他人の立場で考える or別の方向から見ると、どう見えるか
  • つながり:何らかのパターンはあるか。以前同じものを見た覚えはあるか
  • 推測:それが異なっていたとしたらどうか
  • 関連性:何故それが重要なのか

 

この5つを軸に学校教育をテスト中心から「問う力」を鍛えること中心に組み替えていった結果、すごい自由な学校が出来上がった、という。

この話のすばらしいところは学校だけがフリーダム、で終わるのではなくて、そんな自由な学校を運営するのに反対していた保護者たちも沈黙せざるを得なくなるようなはっきりした結果を収めた点。

セントラルパーク・イーストの学校で、デボラ・マイヤー在任中の10年で、それ以前の中退率40~60%が、わずか1%にまで減少していたというのは劇的な効果です。

 

このエピソードの後にも幾つもすばらしい効果が紹介されるんですが、この学校改革のお話は特に印象に残りましたね。紹介されてる教育内容は日本でもエリート高とかでやっているモノと雰囲気が似ていて、それを生徒の出自も水準もまったくバラバラの公教育でやれるのか、と驚きました。

どうも数多く紹介されてる事例の中でも「一般人でも出来そうなネタ」が特に自分には響くみたいです。

ジェフ・ベゾスラリー・ペイジセルゲイ・ブリンジミー・ウェールズなどの大富豪のルーツにはモンテッソーリ教育があったんだよ、ってネタは「ほーん、そうなの」て感じでしたけど

ロスシュタインとサンタナの「ライト・クエスチョン・インスティテュート」の話はデボラ・マイヤーのネタの延長線のように感じられてとて惹きつけられました。

デボラ・マイヤーがまだ「質問する力(本書では質問筋、と呼んでいる)」を抑えているだけの子供たちの能力を開放したことで劇的な結果を残したのに対して、ロスシュタインとサンタナはすでに質問筋の硬直しきった高校生以上の大人を相手とした「質問する力」向上トレーニングなのが面白いです。

すでに「質問しない生き方の方が超クール」という生き方でウン十年生きてきて

「質問する奴はバカ」

みたいな空気に慣れきった大人たちの「再教育」のエピソードは読ませるものがありますが「アメリカですらそんななんだ・・・」という驚きもちょっとありました。

みんなガンガン自己主張して気に入らないことわからないことには「何でなんだよ」って激しく突っ込んでくる国民性だとばかり。偏見持ってました。

また別のエピソードの主役のジャック・アンドレイカ(15歳で膵臓がんを低コストで発見する技術を発明した天才)の語る学校も「これ日本の学校と変わらなくね?」という感じで、アメリカでも目立つ奴を周りがフルボッコにしたいという雰囲気はあるんだな、というのは驚きました。

 

世界はまだまだ驚きに満ちています。

 

そんな「質問する事」への息苦しさの突破口を開こうと奮闘するロスシュタインとサンタナの「質問できなくなった大人のための質問力向上トレーニング」のやり方を備忘録も兼ねて書き留めておきます。厳密には成人用の教育プログラムを子供向けに改良したものらしいですが、とても参考になると思います。

 

1.教師が「中心テーマ」を決める

本書の場合は「拷問は正当化できる」と設定

 

2.生徒が「問いをつくる」

教師は手助けをしない。回答もしない。討論もダメ。全ての問いを書き出す。

全ての文章を質問形式にする。※ついつい焦って答えに飛びつきがちなのを押さえ込むために大事なルール。

 

3.生徒が「問いを改善する」

オープン・クエスチョンをクローズド・クエスチョンに置き換える。あるいはその逆の作業。

※オープン・クエスチョンは複数の答えがありうる質問。クローズド・クエスチョンは「YES or NO」の二択で回答できる質問のこと。

 

4.生徒が「問いに優先順位をつける」

出された全ての問いでもっとも優れた問いを三つ、参加者の合意で選ぶ。

 

5.生徒と教師で「次のステップを決める」

優先度の高い質問を、どうやって行動に移すかを考える。

 

6.生徒は自分が学んだ事を振り返る

 

これ、本書の後半で紹介されていた「ブレインストーミングよりも効果がある」という、問いを出し合う「Qストーミング」のじっさいの進め方としては、これを応用すればいいのではないかしら。機会があったら試してみたい。

 

読み始めたときはあまり興味を惹かれなかったけど、実効性が大きそうな気配を感じられるようになってからは一気に読んでしまいました。問う力すごい。

終盤の問い

 

「もし答えについて合意できないのであれば、少なくとも問いについては折り合いをつけられないだろうか」(P.359)

 

は価値観の違うもの同士の意見が割れたときに「隔たりを乗り越える」ために有効な思いやりのある疑問だと本書では提示していますが、全くその通りだなと。

お互いに同じものが、同じように見えているよね、というところまで立ち戻らないと話が進まないというのは本当によくある話なので、答え同士をぶつけ合うよりはまず、こうした歩み寄りを含んだ問いを発する方がよほど生産的だよな、と納得させられます。

 

訳者は本書を「質問の教科書」と紹介していますが、まさしくその通りだと思います。紹介し切れなかったエピソードも含めて、問うための参考になるネタがたくさんあります。

 

問題にぶち当たって停滞しているとき、取り組むべき課題が見つけられずにうろうろしているとき、是非一読をおすすめします。