afurikamaimaiのブログ

この道は行き止まりだ。引き返せないよ。

桃太郎。

優しい世界。 

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 いっぱい今さら感あるけどなんで炎上したんだろうね。

「お前が言うのが気に食わない」系の燃え上がりだったのかしら。

さておき。

ブコメ欄で「内田百閒と芥川龍之介が書いてる」とあったのでそっちに興味が出た。

じゃあ二人の師匠(夏目漱石)が書いたらどうなるんだろ、って。

ググッたらちょっと前にそういうパロディの「文豪の分隊模写」というのがツイッター界隈などで流行っていたそうだけど、ちょっと残ってる記事を見たかぎりでは、「坊っちゃん」パロディで冒頭だけやってたみたい。

どうせやるなら全部やってほしい。

 

というか「桃譲りの無鉄砲」とはなんなのか。

桃は無鉄砲とは程遠くないか。

つついたとこからじんわり腐り始める弱々しいトマトに毛が生えたようなものではないか。

毛が生えているといってもたいして強い毛でもない、柔毛がほわりと生えているだけで守りに徹したところでいかにも意味がない。

こんなモノ譲りの「無鉄砲」など、はなはだ頼りないではないか。

にも拘らず、桃太は見事鬼を退けたという。

そのようなものに退治された「鬼」となると、これはもうよほど可憐な存在と見える。

むしろそれは守るべき存在ではなかろうか?

それでも桃の字は鬼との合戦後に「一週間ほど入院した」とあるから、お互いにいい勝負であったのやもしれぬ。

桃がつつかれたまま一週間も置いておいては腐ってしまうのではないか、などと余計なことが気になってしまうが、たちまちは措いておく。

より気になる談は「単身」鬼が島へ乗り込んだというところである。

 

解せぬ。

 

桃太郎とは、三匹の朋輩とともに乗り込んだのではなかったか。

犬、猿、雉を連れぬまま乗り込む桃太郎というバージョンもあったのだろうか。

そうであったとしても、坊っちゃんベースでも猫は出すべきではないか。

 

例えば・・・

 

桃太郎、猫に声をかける。

吾輩は猫である。名前はまだない。」

と自己紹介されて、では猫よお前のことをなんと呼べばよいのかと尋ねる桃太郎に

「貴方、犬・猿・雉をどう呼んでいたね」

「イヌ・サル・キジ、と呼んでおったな」

「なら猫はネコでよいではないか」

みたいに駄弁る。

「そんな些細なことより君、我輩に渡すものがあるのじゃないか」

と猫に催促されて桃太郎は腰に下げた黍団子に気付くのだが、ここまで会話の主導権を猫畜生に握られていることにようやく気付いた桃サイズの脳味噌の桃太郎、ちょっとばかしイラッとしたので一計を案じ、婆の持たせた茶碗の底にへばりつけるようにして黍団子を入れ、猫の前に差し出すわけだ。

「気が効かなくてすまなんだね。こいつでどうだい」

「こいつでどうだいって桃太郎、ただの茶碗じゃないか」

「猫ともあろうものがもっと近づいてよく見てみなさいな」

「む。黍団子か」

「おうさ。茶碗からじゃ食えんカネ、地べたに投げたほうが良かったな」

「バカにしたもんでないよ君、我輩は二〇世紀の猫なのだ、あんまり軽蔑してくれちゃ困る」

そういって猫は茶碗の底の黍団子を前足でいっぱい掻くけどベットリくっついてるのでなかなか取れない。

何度も何度も挑んだあげく、ようやく団子の端っこが茶碗の底から剥げてくる。ようやくのことと一息ついたあと、猫はその剥がれた端っこめがけて、茶碗にアタマを突っ込んで食らいつこうとした拍子に、バランスを崩して茶碗がひっくり返ってしまう。

にゃあと言うまもなく目の前が真っ暗になる猫。

転地逆転した茶碗の中では、底にへばりついた黍団子がべとりと猫の頭に引っ付いてしまっている。剥がれかけた端っこも猫の自慢のひげを包むようにしてくっついている。

猫パニック。

茶碗を被ったまま後ろ足ですっくと立ち上がり、右往左往し始める。

こっけいな踊りで一笑いして溜飲を下げた桃太郎は、猫の茶碗を剥がしてやり、哀れな畜生を柔らかい暗闇から解放してやる。

「堪能したかね」

桃太郎が問うと

「存分に賞味した」

と猫は強がりを言う。

これで契約成ったり、と安堵した桃太郎、肝心のことを忘れておった。

「ところで君、猫よ」

「なんだい」

「君どれくらいのものなら退治できるね」

かたまる猫に畳み掛けるように桃太郎は言う。

「婆のところのドラ猫のように、鼠は獲るものだろう」

「あんなものを取るのは旧い猫だよ。今時分の猫はそのようなものは獲らぬ」

「鼠を獲らないってじゃあ君、何を獲る」

「蟷螂さ」

「蟷螂」

「そうとも、なんだったら蝉も獲る」

「蝉」

「桃太郎、君一寸馬鹿にしてるかもしれないが連中を獲るのは中中骨の折れるものだぜ。鼠を獲るより難しいかもしらん」

不安のこみ上げてきた桃太郎に猫はすかさず反撃をする。

「君の方はどうなんだい。何を獲るね」

実戦経験皆無の桃太郎。

「何を獲るって、婆の畑の大根とか爺の柴採りとか」

「桃が大根だの柴を狩るのかね」

「猫よどうやら思い違いをしてるな。大根も馬鹿にしたものではない。ただ膂力に任せて引けばよいというものではない。あれで中中熟達せねばならんものだ」

「その熟達は鬼退治の用に足るかい」

「足るさ」

「足るかね。鬼は大根かい」

「大根ではなかろうが、まあ似たようなものだろう」

「しかし鬼は大根と違って動くが、君遣れるかね」

「それは遣ってみねば分からぬよ」

そう答えたあと桃太郎は黙り込んでしまう。猫もそれきり何も言わず、前足でしきりに頭と耳についた黍団子のカスをこそげ落としては舐めとっている。

「思うのだが桃太郎」

爪先に残った最後の一欠片を口に入れた後、猫が言う。

「なんだい」

「日を改めたほうがよいのではないか」

「じつは僕もそう思っていた」

間髪入れずに応じた桃太郎の顔はどこか晴ればれとしている。

壮途を断念した二人は、それぞれ家路に着いた。世はなべてこともなし。ちょっと狐に包まれた体である。

 

 

 

・・・アカン。

よくよく思い出せば猫めっちゃ弱かった。

桃譲りの桃太郎もあまり強くなさそう。てか確実に弱い。

鬼退治に出かける前に諦めてしまった。

この筋はダメだな。別の筋を探そう。

 

どうでもいいけど桃太郎の定番らしいオチ

「鬼が方々から収奪してきた金銀財宝をオレのものにして幸せに暮らす」って

収奪された側からは財産の回復が出来ない点で鬼となんら変わるところがないな。

盗まれた被害者からすれば、いつか殴る対象が鬼→桃太郎にスライドしただけ。

鬼から回収した財産をそれぞれ本来の持ち主に返還して落着、ってオチはないのかしら。