自分用しおり。
昨日の続き。
一晩おいて気付いたのだけど、これ危険運転致死傷罪の導入当時の展開に似てるな、と。
危険運転致死傷罪の成立前にも、いろいろ悲惨な事故があった。
時系列
1999年 東名高速飲酒事故
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/641/005641_hanrei.pdf
民事裁判の判決書。4-5Pさらに、10-11Pに被告(と被告を使用していた運輸会社)の詭弁を断罪するかなり強い調子の言葉が並んでる。
まあそこまで言われてもしゃーないくらいにひどい内容だったんだな、と当時を思い出す。
2000年 小池大橋飲酒運転事故
判決探したけどなかった。けどまあ伝えられる限り酷い事故。
この辺があって
2001 危険運転致死傷罪
ってなって、やれやれこれで…と思ってた時にいっぱい印象的な事故が発生する。
2006 福岡海の中道大橋飲酒運転事故
詳しくはWikiとかに書いてあるんで割愛。
ただこの事故、一審の時にせっかく新たな武器として渡されていた
「危険運転致死傷罪」の適用を地裁が退けてる。
高裁判決。たいへん面白い。
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/658/037658_hanrei.pdf
1審の「わき見直進可能」→「じゃけん、わき見が主因・飲酒は因果薄い」という結論に対し
2審では
「スムーズに直進可能やと思うやろ?」
「けど微妙に曲がってるんや」
「1審では11秒超の長時間わき見による直進が可能と判定したけど、無理」
「実験繰り返したけど、そんな長時間わき見してたら、3~5秒に1回ほど当て舵せんと縁石にぶつかるでクラウンマジェスタ」
という検察の主張を容れる形で飲酒運転を事故原因として認め、危険運転致死傷罪を適用。
って流れ。
うっすらとした記憶しかないけど
これ以前にも危険運転致死傷罪の適用回避の事故が複数件あって
「これあっても使えないクソ法じゃねえか」
みたいな反発が渦巻いてたような記憶がある。
これほど明白な飲酒事故でも適用できないとなるとおかしいだろ、って1審はボッコボコにされてた記憶もある。
今回の事件の判断も、こういう流れになるのかな、と。
何となく感じている。
検察の捜査手法の拙さもあって突っ込まれるところも多々あったろうけど、
1審は劇的に法が改正されても、新法に従ったとしても、従来の流れを大きく逸脱した判断をするのが難しい、みたいなところがあるんじゃないのかしら?
福岡の事件の経緯と一緒くたにするのは拙いんだろうが、1審と2審の逆転はおおいにあり得ると思う。
落ち着いて経緯を見守るのがよろしいのではないか。
って他人事みたいに言えるのは自分に被害が及ばない、っていう楽観があるからなんだよなぁ。
自分事と考えたら落ち着いていられないのも当然。
東名高速の飲酒事故については、当時にしては珍しく動画が残っていて割と目にする機会がありました。そして報道特番などで運悪く見かけるたびに
「こいつ殺していいんじゃないかな」
って自分でも思いましたので。*1
ただこういうことをする前に、もう少しだけ信じてみるのもいいのではないかしらん?
口コミが酷い…
苛立たしくなるほどトロくさい歩みでも、たしかに前に進んでいるんだという明るい面を見たいです。
未だに悪質な飲酒運転は後を絶たないけれども、それでもかつてに比べればだいぶ減りました。
適当な資料がないのであちこち継ぎ接ぎだけど
https://www.mhlw.go.jp/topics/tobacco/houkoku/dl/100222f.pdf
飲酒運転撲滅の啓蒙サイトの奴だけど
P13に1990~2008の飲酒運転死亡事故のグラフが提示されてる。
警察庁資料。
2Pに平成10(1998)~平成26(2014)までの飲酒運転事故数、うち死亡事故数のグラフがある。
大雑把に言って。
平成の30年でずいぶんな変わりようじゃないですか。
過去がそれだけクソだったということでもあるんですけれど。
けどそのクソを放置しなかったからこその今があるわけで。
それでもどうしたって不満はあるけど、手も足も出なかった過去を思えば。
性犯罪関連も、思えば尊属殺とかいう「トチ狂ってるのかな?」って認知が当たり前のように通用してたクソのような過去があって、それに抗って切り拓いてきたから今があるのだと思います。まだまだ不十分であっても。
意に沿わない結果になった時、その判断を下した者だけを吊し上げることで果たして未来は切り拓かれるのかっていうと、それはないと思う。
上記の飲酒運転事故の時の俺の反応もそう。
東名高速事故のトラッカーも、福岡事故のクラウンマジェスタも、殺したり吊し上げたりしたら、さぞ俺はスッキリしただろうなって思う。
けど、それでなんか状況変わるのかよ、って。
クソみたいな犯罪者を一人二人私刑にしたところで、クソみたいな犯罪者が次々ポコポコ発生するのが変わらないんなら意味ねーじゃん。
クソみたいな犯罪者を取り締まるための法規に、実体を与えるために、実効性を持たせるためにはそんな気分スッキリは無意味。
飲酒運転者が逃げ得しそう、というニュースを聞くたびに腸が煮えくり返る思いがしていたし、今もする。これは多分、今回の事件の地裁判決を聞いて憤りを感じている人たちの気持ちと、似ているんじゃないかな、と勝手ながら思う。
その気持ちを抱えるのは非難するつもりはないけども、その気持ちに任せて苛立ちをぶつけるのは決して生産的ではない、と過去の自分の振舞いを自戒した次第。
遅々とした歩みでも、きっと少しずつ良くなっていると思うんだけどね。
楽観すぎるかもしれんけど「今は夜明け前の一段と昏くなるっていう、アレみたいな状況なんじゃね」って捉えたい。
*1:ネットの動画サービスにも転がってるかもしれませんが、見るのはお奨めしません。責任転嫁・責任回避がすぎるクズの振舞いに反吐が出ます。俺が酒呑みに対しては異常に酷薄なのを抜きにしても、これを好意的に見るのは無理でしょう。