嘘をつくのはいつだって人間です。
もう一つの方が騒動になってたけど、こっちの方が見た人の評価は高かった。
おおむね
「山崎貴のくせに」
というなんだかひねくれた高評価。
なので気になって見てきた。
あんま期待してなかったので、冒頭の大和だけで元は取った気分になりました。
素晴らしいね。
今までは撃沈される大和の悲喜こもごもドラマがスポット当たってばかりだったけど、これはそういうのに配慮が一切なし。
精神力は物理の壁を越えない、というのをこれでもか、これでもか、とガンガン叩きつけてくる。
その戦闘中の演出もね・・・なかなかえぐいコントラスト。
「死ぬことしか望まれてない」大和 VS 生きてかえるのが割と当たり前の米軍
ベタだし、実際にはやってないだろ(やっても全部終わってからだろ)、って思うんだけどそれだけに効果抜群。
※追記※
http://www.warbirds.jp/ansq/6/F2000438.html
どのような資料かは明記されていないが、当時の乗員の目撃証言があったらしい・・・マジかよ。
制空権が磐石、何があろうと敵機が来ない状況であればあれほどの余裕ぶちかましも普通ってことか。
フィクションでないとすれば、絶望感さらにマシマシやね。
※追記終わり※
その後、10年ほどさかのぼって話が回り始めるわけだけど、序盤の学芸会風味なのは役者がまだ役柄にこなれてないのと、いつもの山崎らしくムダに喋らせすぎる展開でやっぱダメじゃん、って思ったんだけど。
中盤以降、この辺はだいぶ改善する。
ぴったり嵌ってくる感がある。
一番いいのは大角大臣の小林克也。
しょうもなくてだらしなくてふらついてるみっともないおっさんやらせたら、ある意味最強だよねこの人。
「リボルバー」の不倫してたらフラレタおっさん役もすげえ良かった。
みっともなくて。
この映画でもその辺の「あぁ、ダメな人なんだこの人」というのを実に上手く演じてて素晴らしい。
橋爪功・國村隼・舘ひろしの三人がややくどい感じ(特に橋爪)なのに対して、自然体で「ふらついてる機会主義者」感がとてもよく出ていて素敵。
終盤に化けたのは田中泯。
クライマックスの会議のシーンでの演技からラストの流れが怒涛のごとく。
こういうオチにするのか、っていうのはたしかに驚いた。
連載がまだ終わってなくて(原作のほうも評価高いらしい)、どういうオチにするのか不安視されてたそうだけど、これは田中(平山)VS菅田(櫂)のケリのつけ方としては納得できるのではないかしらん?
俺はちょっと引っかかったけど(以下ネタバレのため反転さす)、それでも良かったと思う。
「沈むために産まれる」というのがなんかね、ベストを尽くしてない感じがあって引っかかる。「おっきな時代の流れとして、大和がなくても日本人は戦争に突進する」というその見立てはたいへん正しいのだけど、それでもそこで足掻くほうが断然好みだよ、ってなる。
冷静なのは田中(平山)の見立てで、それに菅田(櫂)も納得したからこそのラストに流れるわけだけども、それはつまり「何があっても、どのように自分が手を尽くしてもこの国は変わらない」というのを受け入れてしまってるということで、そこが何とももどかしい。結局そうなるのが見えていたとしても、その正しさを自分で分かっていたとしても、それでも何とか止める手立てはないか、ギリギリまで足掻く菅田が見たかった。賢すぎる人、未来が見えすぎる人はある種、諦めがよろしくてちょびっと好みではない。面白かったけど。
他の映画よりも優先すべきか、といわれると微妙かもしれない。
元々のハードルが「山崎貴か・・・」という感じでかなり低かったので、いい意味で予想を裏切られて絶賛してる気がしなくもない。
けど見る映画が決まってないとか、映画は見たいけど、どれ見たらいいか迷っているのだが、という人にはお奨めしたいくらいにはよく出来た映画だと思いました。
落ち着いたらまたちょっと評価変わるかもしれんけど、今のところはそんな感じです。