以前西田敏行でドラマになってたらしいが未見。
全部は読んでないけど、浅田次郎の小説は計算ずくだなぁと思う。
いつも乗せられてしまうほうが悪いといえばそうなのだが、のせ方がうまい。
古い本なのでネタバレしても大丈夫だと思うけど
バリバリの現役課長が接待の最中に突然死。
そして死後の世界で審判を下されるのだが不服申し立て+現世に未練あり。
特例で7日間だけ現世に戻るのを許すのでそれで未練を断ち切ってあと冤罪の証拠を持ってきて、と現世へ送り返される・・・という話です。
椿山課長だけじゃなくて、テキ屋の親分とか交通事故で跳ねられた子供の黄泉返りも語られて最後は三人の話が一つのオチにまとまるのがキレイ。
やや強引かなと思う展開もあったけど、三人の運命を束ねるクライマックスの盛り上がりはさすがだなぁ、と思ったり。
三者三様のよみがえった後の話が語られたんだけど、三人の中では一番テキ屋の親分の話が良かった。
三人の中では一番ミッションがシンプルだったのも大きいかも。
「残った子分たちが人の道を外さないように諭す」
ってのが分かりやすかったのと、ほかの二人の線に比べて繋がる登場人物の線が大きく脱線するような感じがないので、すんなり話が入ってきたんだと思います。
椿山課長もなかなかしんどい人生を抱えてたようで、おそらく普通の夫婦の死に別れのときよりも多くの人が絡んできたし、雄太の場合も、普通の親子の死に別れと違って両親が倍いるし。
この辺でちょっとこんがらがったというか、するする読める感じじゃなかったので、より武田の親分の話が印象に残ったのかなって思います。
少し残念なのは終盤がやや駆け足な感じがしたこと。
これは7日間(実質3~4日)のタイムリミットであれこれケリをつけなきゃいけないから仕方ないのかな? オチをつけるために終盤でぽんと現れた感じの登場人物も居たので、ここがもうちょっと・・・という感じでした。
キャラとしてはもうちょっと深く掘れば面白い奴だったのだろうか、と言う感じだったんですけどね。
群像劇(と言うほどでもないかもしれませんが)、お話の線が複数ある物語だとどうしても登場人物の描かれ方に濃淡が出るのは仕方のないところ。しかしそこで端折られてるような印象があるのが、読んでるうちに自分が好きになった登場人物だったりしたら残念感が大きくなるのがいけませんね。作者が気合入れて描いてる登場人物と、自分が気に入った登場人物が重なってれば最高なんだけどな。
そうそう、最後はけっきょく椿山課長は冤罪でもなんでもなく、邪淫の罪で有罪だったんですけど、これに激しく反発して冤罪を唱えていたあたり、ひょっとして生前から椿山課長は心の隅にずっと佐伯氏のことが引っかかってたんじゃないか? って読み終わってから思いました。
鈍感だってさんざん描かれてたけど、心の底の底の方では実は気付いてたんじゃないかな・・・と。
死というきっかけで佐伯氏の本音に気付いたんだけど、ひょっとしたら椿山課長あのまま生きていてもいつか気付いてたんじゃないだろうか? ・・・・なんてね。
もう椿山課長は死んじゃってるから尋ねようもないのですが、もし何か質問できるならぜひ聞いてみたいですね。
「ホントに佐伯氏とは後腐れがないと思っていたのか?」 って。