主役って何なんだろう、って思わされた小説。
悪くはないよ。
悪くないっていうか、いつもの谷だなって思える。
けどなんかなぁ、
なんかなぁ。
昔の朝ドラでこういう口癖でイラつかせてくれるキャラいたよね。
もとい。
吾はほぼすべての朝ドラのキャラにイラついてるのでどれか思い出せませんわ。
すまん朝ドラ。
主役が状況に巻き込まれる流されるってのはまあよくあることです。
ですが!
この小説、主役がちっとも成長しない。
成長しない理由は割とはっきりしてて、コロッコロコロッコロ敵が変わるんすわ。
「オメ―は素直だな」ってのも行き過ぎるとバカだよ、って思う。
そこはそれ、人間らしいっちゃらしいんだけどね、話的にカタルシス欲しいじゃないですか。
どんでん返しを何度も重ねて「やつが敵だったぜ」みたいにするのはいい。
だがそのタメが圧倒的に足りない。
登場人物はそこまで多くないが・・・いや、多いのか。
主人公のふらふら加減を見てるとやっぱ多い。
ふらついてても最後はシャキッとしろよ、って思うんだけど、これがシャキッとしない。
もしかすると、主人公的には「俺はシャキッとしたぜ」って気分なのかもしれないけれども、まったくそんな雰囲気を感じない。
何も乗り越えてないんですよ。
十兵衛然り、作之進然り。
真之介が自らキッチリとけりをつけようと決意して動いてない。
序盤~中盤にかけてはいい感じにキャラも動いてて、どちらかと対決! ってノリになるのかと思ったらダラダラ流されたあげくにチョン、ですよ。
もったいない。
そういう分かりやすくカタルシス満点な作風じゃないというのは踏まえたうえでも、それでもやはりどうかと思う。
主役が「こう動こう」と決めて、設定したゴールがどんどん揺れてる。
中盤までなら成長中ってことでじわじわ繋がるのかもしれないって思うけども。
クライマックスに至る過程でもキッチリそれを見据えたわけではなくて、どっちつかずに流れたあげくに最後のオチってなるのが辛い。
すごい消化不良です。
もう少し手前で、しっかりと「俺は奴をヤる」っていう目的をはっきりさせて、それに沿って動いてほしいと思った。
すごいベタだけど、主役ってそういう風に動いてほしいじゃないですか。
そんなエンタメ狙った覚えはねえよ、って作者に言われたらもうそれはしょうがないんだけども、それでも真之介、いい主役だと思いますか? ってのは問いたい。
これはもっとキュッと削ってしまった方が良かったのか。
それとももっとグッと大幅に加筆して、真之介の剣技の凄味をいっぱい印象付ければよかったのか。
どうすれば正解だったのかはわからないけども。
もうちょっと主役らしく動いてほしいと思う小説でした。
ネタとしては面白いんだよなぁ・・・もったいない。
もっとこうスッキリと勧善懲悪なエンタメ感を前面に押し出しても良かったのではなかろうか。