昔のことは想像以上に忘れている。
ホントに笑えるほどに。
中学生のころのことすら、ろくに思い出せないのだ。
ね。
ジュニア新書って書いてある。
開いて「えっ?」ってなったね。
吾中学のころこんな字の詰まった本読んでたか?? って。
これなら簡単に読めるだろ、って思ってたんだけど、想像してたのと違った。
ほんとにジュニア向けなのかこれ? ってのが内容より何より最初の感想。
こんなところで引っかかるとは思っていなかった。
さておき中身の方は面白かったです。
読者層を考慮してか、漱石が若い人に送った書簡が数多く収録されてる。
それはそれとして、いちばん面白いのは読者とガチバトルしてるところだと思う。
「硝子戸の中」にはもっと強烈なキャラ(岩崎)が出てくるらしいが、そっちは未読なんで措くとして、「明暗」をめぐって大石泰蔵という読者とやり取りしてるのが面白い。
お怒り具合では、博士号やるよ騒動のときとタメを張るくらいな雰囲気。
怒ってるんだけど、読者(大石)の見識を認めたうえで思いきり怒ってるのがいい。
最初の手紙を見たときは
オメーホント分かってねーな!!
って思ったけど、どうやらそうでもないようなので返事するよ。
と書いて、
オメーの言い分は分かるけど、まあ明暗のオチ見とけよ!
それでも見解変えられないのなら残念だが、オレはオレを曲げない!!
って〆る。
ここまで書かれると、大石氏も「明暗」最後まで読めなかったのは痛恨だろうな、とかそういうことを想像してしまう。文豪がここまで大見得切ったんだから、期待して待ってただろうに。
全般に
若い人向けの体裁ですが、吾にはちょうどいいくらいの感じでした。
時系列に沿ってピックアップしてるので、漱石の健康状態の変化が手紙にもしっかり現れてるのもいい。
若い人には、芥川を激励する「牛におなりなさい」の言葉もいいけど
漱石自身の
「余は吾文を以て百代の後に伝えんと欲する野心家なり」
森田草平宛 1906.10.21
これくらいの威勢のよさを見習ってもらうのも面白いかな、と感じました。
・・・じっさい言葉どおりに漱石の残した作品は百代先まで残ってそうなんだからたいしたもの。若い人にはこれくらいの野心を抱いてほしいのです。