飛べそうで飛べない。
今朝はだいぶ冷え込んだけれども、朝日が出るとグングン気温が上がって、昼間はちょっと暑いくらいだった。暑いは言い過ぎかな。普段は外に出るときにポケットにカイロを入れているんだけど、今日はカイロなしでも大丈夫くらいには暖かかった。
そんな暑くなるちょっと前、10時ぐらいに休憩がてら外をぼんやり眺めていたら、地べたで虫か草か、何かついばんでた雀が一匹、ふいに飛び上がったのね。
窓際で見てたんだけど、窓のすぐ外は枯れた芝生がすこしだけ広がってて、その数m先に生け垣があるような小さな庭で、雀の飛び方がえらい生け垣スレスレなの。
飛び上がるっていっても、跳ねながら歩くのがちょっと派手になったくらいの挙動で、力強さがまったく感じられなかった。だからもう出だしからやたら飛んでる高さが低い。距離はとても短いから、ほんの一瞬もなかったんだけど、その一瞬、たしかに
「こいつ飛び越せるのか?」
って不安がよぎった。すぐに(スレスレだけど)飛び越していったんで杞憂に終わったわけなんだけど、えらいヨタヨタした飛び方だった。
すごくどうでもいい。
どうでもいいんだけど、これがもっとシュッとした鳥だったら、こうは思わなかっただろうな、と。
そのあと目に留まったシジュウカラを見て考えたのです。
ちっさい割に、もこもこもっさり感、ボリューミーな感じではさっき与太ってた雀と大差ないんだ、たぶん。
多分そうなんだけどなんか配色が鮮やかでさ。
コイツがさっきの雀のようにヨタヨタ飛んでも、生け垣のスレスレを飛び越えても
「ギリギリ攻めてんなぁ」
って感じたんではないかと。
見た目がもう「俺は飛べる」って感じがする。
胴体の白も尻尾の黒も、ビシッとしてて、いかにも鳥の中の鳥って感じ。
これに対して・・・雀はなぁ。
枯れた芝生の上でちょこちょこ動いてると、尻尾が土と草に紛れるからね。
俺の目が悪いのもあるけど、丸い玉がころころぴょんぴょんしてるように見える。
けして短いわけではないんだけど、なんか寸足らずの尻尾のようで不安だし、頬っぺたの模様もなんか無駄に顔をでかく見せてる。
コイツじつは飛ぶの苦手だろ、ってどうしても感じてしまう。
この時期だからなのか分からないけど、一度の飛ぶ距離がやたらと短いのもそういう印象を強くさせる。
生け垣を超えたかと思ったらすぐ下りたからね。
たぶんスズメ
「飛べ 飛ぶなら 飛ぶとき 飛ぼう!」
って自分に言い聞かせて勇気を振り絞って羽ばたいて生け垣を超えた安堵から、すぐに着地してしまったんじゃねえのか、と。
そんな無駄なことを想像してしまう。
ちょっと見た目で判断しすぎよな。
実はスズメの方が、飛ぶのは得意なのかもしれないじゃないか。
見た目はあんなでも。
そもそも体型ほとんど変わらないのだから、シジュウカラと互角であってもおかしくない。シジュウカラよりスズメが鈍重だというのは思い込みの可能性が大きい。
大きいけど、スズメがシジュウカラを出し抜いてより速く、より高く飛ぶ姿は想像できない。
単なる配色の違いだけでここまでDISられるとかスズメもいい迷惑だろうが、やっぱり見た目って大事だなぁ、と。
帰り路、街路樹の根元の枯葉の中でがさつくドバトの音にビビったときに思った。
奴らはスズメ以上に風景に溶け込むカムフラージュ感がすごい。
けど蛍光グリーンと紫の首のハトに比べて鈍重なイメージはないんだよな。
なぜ俺はスズメに対してだけ、トロくさくて鈍重な偏見を抱いているのか。
少し引っかかっている。
連中があまりに人間を警戒しないからかな?
しかしそれならハトもなかなかふてぶてしいもので、過去にふてぶてしすぎてチャリに轢かれたハトを目撃したこともある。
そこまで愚鈍なスズメはまだ見た記憶がないのだが、それでもスズメの敏捷性はハト以下だという偏見がある。
我ながらおかしい。
なぜ俺はスズメに対してこれほどいわれのない偏見を持ってしまっているのか・・・?
と、書いてて思いだしたけど、昔飼ってた猫のお土産がだいたいスズメとネズミだった。この猫がまた重くて鈍い奴だった。子供の頃だったから膝の上から退かすのだけでもめんどくさかった。なので、こんな巨猫に捕まる≒種としてヤベー鈍さ、っていう印象が強く残ったのかも。
一緒に暮らしてるうち、猫は太ましくてもそこそこ動ける、というのはそのうち分かったけど、最初に鈍い猫だと思い込んでて、その猫に捕まるんだからさぞやスズメはスローモーな生き物なのだろう、という思い込みがバッチリ固まってたのかもしれない。
別にあらためる必要もない偏見だが、いい機会なのでもう少しスズメのことを見直そうと思う。
生け垣をギリギリ飛び越えたのは全力を振り絞ってやっと、だったわけではない。
体力を温存するためにより低く、より短く飛んでるだけで、スズメはまだ本気出してないだけなのだと。
いつかスズメの本気を目撃したい。