ようやく読んだ。
もっと早く読んでおけばよかったね。
そもそもなんで読もうと思ったのか・・・書評サイトで好評だったからかな?
きっかけが思い出せない。
ただ、表題作含む4篇の短編集なんだけど、第1作「吉田同名」の出だしのところが、なんか鬱陶しい羅列だな、て思って読みだしてすぐに投げてた。そしたら1年経ってた。
それが今年になって読み直してみると・・・いや面白い。
なんで投げ出したんだろ? って首をひねるレベル。
当時は疲れていたんだろうか? 読書ってメンタルの影響がてきめんに出るものなぁ。
毎日読める人すごい。
俺は無理。
さておき、うっとうしいなあ、って思ってた序盤のいろいろ込み入った文章、
2、発生
に入ったあたりからがぜん面白くなってくる。
(つまり以前はその手前で投げ出していたということ)。
話そのものは、とても単純なんだけども。
描かれる吉田大輔氏の心理の変遷、生態の変遷がとても面白い。
内容の面白さよりも、文章の雰囲気の面白さかな。くどいのがいい。
くどいんだけど、これ読み飛ばしていいや、ってなるほどに前の文と似通った形ではない、少しずつ変えてる文が連なっていって、時々フフッ、てなる小ネタをぶち込んでくる。こういう雰囲気の文章とても好き。
オチはちょっと「うわぁ」だけど。
けどそうした文章のリズムや、小ネタちょいちょい入れてくるので一番面白いのはやっぱり表題作の「半分世界」かな?
これも話としてはとても単純。
単純だけど季節の移ろいを追って描かれる人間模様がとてもいい。
狙ってるんだろうなぁ、って小ネタ、ネーミングの数々。
それにいちいち引っかかって「ふふっ」ってなる俺。
完全に作家の掌の上で転がされてる。
系統としては次の「白黒ダービー小史」も似たようなものだけども、こっちの方がまだ元ネタが全部わかる感があって面白かった。
オチは予想の範囲内の予定調和のような、そうでないような。
主客の逆転までは展開から読める感じ、その先はちょっと想像してなかった。
「白黒ダービー小史」と「バス停夜想曲」はSFっぽい。
まったく違うんだけども、時間の流れの歪み具合が似た作品だなと。
「白黒ダービー小史」の方は、それでもまだベクトルが前進してる感じがあるけど、「バス停夜想曲」の方は本格的に円環が綴じてるというか、平面の上に螺旋が展開してるような読後感があった。
疾走感のある「白黒ダービー小史」の方が好みかな。
もっと早めに読んでおけばよかった。
おもしろいSF短編というのは、知らんだけで日々新しく産まれているものなのだなぁ。
言葉遊びが好きな人とかには刺さると思います。お奨め。