否。
そもそも似てなどいなかったのだ。
こちらの記事に刺激されて、ちょっと読んでみる。
読み物としては同著者のほかの本のほうが~、ってのは同意。
ただ何も得るところはないか、というとそうでもなくて
今までの著書がどちらかというと
「しぶといなコイツラ(ブリトンのワーキングクラス)」
という明るめな側面が強調されてて、この先もタフに生き延びそう、という感じを抱かせてたのに対して、100年を振り返ることで、このタフな人たちも転落と排除の歴史を辿ってきたのだというのに触れられてて、そこがちょっと新鮮だった。
ざっとまとめると
20世紀前半を通じて少しずつ権利を獲得してきたけど、1945の大転換、そこで労働者階級が自信を得たのが頂点で、そこからは(特にオイルショック後、サッチャリズムで決定づけられた)資本家・支配階層の攻撃で労働者階級の尊厳の破壊が進行したという歴史観。
ところどころ百合戻し揺り戻しはあるんだけど、それが歯車を逆転するまでは至っていない。このまま転落するか・・・と思われたその寸前、まさかのブレグジット、ついでに2017総選挙での労働党の大躍進が起きた、という顛末。
著者も書いてるとおり
排外主義の典型としてのブレグジット
そのわずか一年後
極左、ジェレミー・コービンの労働党の大躍進
外から見てるとぜんぜん意味が分からないとなるのもむべなるかな。
だけど。
労働者階級は、間違っていると思ったら『間違っている』と言う。
相手が聞かなかったら、首ねっこ掴んででもこちらを向かせて聞かせる。
それでも聞かなければ、キッチンの流し台から何から彼らに投げつけて、聞かなきゃどういうことになるか思い知らせてやる。
スティーヴ(仮名)のインタビュー
ってところでは一緒なんだよね。
白人労働者階級、ってことでマイノリティ保護の対象からも外され、労組も弱体化し、それぞれの関係が切断されて各個撃破され続け、「あいつらは自己責任だから」って下からも上からも救われない。「ブロークン・ブリテン」騒動とか。ほぼほぼ同一階層の人々からも生保受給者に同情ではなく、呪詛が向かうように仕掛けるメディアキャンペーンとか。
なるほど、「ホワイト」で「プア」ってだけでここまで蔑ろにされますか。
んなら、声あげるしかねーじゃん、という。
今まではそれが覆われてたけど、エスタブリッシュの連中が正面切ってオレ達の事を無視してNHSは放置する、けど移民は入れる、貧弱な公共セクターはそのままパンクしてればええんや、ってノリで政策を推進してることに国民の是非を問うんなら、そりゃ声を上げさせてもらう。ぶちのめすぞヒューマン。
ってのを表明したに過ぎないというね。
もともと労働者階級が求めてたのは、削られる一方の公共セクターの回復≒反緊縮で、そこを蔑ろにしたまま優先すべき課題としてEUとの更なる合一を目指すのは間違っている。その意思表明だったということ。コービン労働党の躍進もその現れに過ぎない。
上があまりにも下のことを聞かなさすぎたんだよ。
というオチ。
やっぱりねぇ。
「やつらはこう考えてるに決まってる」
「あいつらはいつもそう」
みたいに即断する前に、「じっさいどう考えているのよ」って確かめるのは大事。
そう思わせてくれる本でした。
んじゃどうすればいいの? という点については、本書の終章、それとあとがきにサラっと書かれてるのがいちばん大事だよな、と思った次第。
気になった方はぜひ読んでね。
最後に。
ーー労働者の価値観って、あなたから見たら何ですか?
「助け合うこと。困っている者や虐げられている者を見て、放っとかないこと」
スティーヴ(仮名)のインタビュー
スティーヴはいい奴だなぁ。