
ペリリュー ─楽園のゲルニカ─ 1 (ヤングアニマルコミックス)
- 作者: 武田一義,平塚柾緒(太平洋戦争研究会)
- 出版社/メーカー: 白泉社
- 発売日: 2016/07/29
- メディア: コミック
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巡回中のブログで言及されてたので、こちらでも紹介しておこうかな、と。
とにかくいっぱいいろんな人に読んでほしい。
細かい内容は触れないほうがいいのかもしれない。
読んで判断してもらうのが一番いいと思うので。
とはいえこれだとブログが終わってしまうので、冒頭部分だけでもちょっと触れると
「俺きっと、このシチュエーションだと小山くんだわ」
って思いました。これは読んで確かめてほしい。ぜひ!
往々にしてそんなもんなんだよな・・・と。
平時ですら、自分の望んだような〆方で幕を下ろすことの出来る人間のほうが稀なわけで、ろくでもない状況にいきなり放り込まれて望んだようなオチのつく人生を送りました、ってなると思うほうがおかしい。
だから、ちょっと落ち着いて考えてみれば、死者を突き放してみれば
「こういうのもあるだろうな」というのは理解できる。
けどこの切断が難しい。よく見知った相手であればあるほど。
その無念はいかばかりか。
となると・・・ってことでコレが次の主人公の行動とも繋がってくるわけですが。
この話を読みながら、「進撃の巨人」冒頭のシーンを思いだして、「その人の死を看取ったもの」が、それを近しい人に伝える時に、どっちが正解なんだろうな、としばし悩む。この比較はまたそれとして興味深くはあるんだけど、本題じゃないので措くとする。
演出の上手さに感心しました。
このときの「死の伝え方」で主人公は、たぶん気付かない方がよかったことに気付いて、そのことを悩んだりもしてるんだけど、それはそれでいったんオチがついたはずのこの話を、2巻でもっかい持ち出して認識を揺さぶる感じがいいと思う。
果たして、それはホントにウソなのか?
いやそもそも「ホント」ってなんなんだろう?
ってなる仕掛けの上手さ。
これは本当に自分で読んで感じていただきたいところ。
ウソとかホントとか、そういうところを超えた話になってると思います。
死を脚色したことを「これで良かったのか」と悩んでる主役も
聞くかぎり脚色したとしか思えない「有り触れた良くある美談」を語る負傷兵も
どちらもあの場でのありようとして、そうあるしかなかったんではないか、と思わせる。
※ちょっとネタバレになるので反転しておく。
読んだ上で色々感じてほしいので。
他にも色々と優れた漫画だと思うけども、いまのところ一番印象に残ったのはこの一連のエピソードでした。
なんだろう、言葉というか、お話が、それを受け取る人を超えて一人歩きしていく感じがぞわぞわします。もっと上手く表現したいけど、どう言えばいいのか思いつかない。
そんなことを意図して言ったわけではない、はずの言葉と話が、その伝えたかったことを超えて広がっていく感じ。
2巻の負傷兵が、あまりに美断じみた美談を語るのも、主人公が小山の死を脚色したのも、小山の父の死が(おそらくは)脚色して伝えられたのも、語った者の意図の第一として「死者の名誉を守る」があると思う。けれども、その意図を超えて言葉が受け止められて消費されてしまっている感がある。小山の父→小山の「あるべき皇軍兵士」の典型としての受け止められ方もそうだし、負傷兵の語る上官の死の場面もそう。
「そうでなければならない」型が自覚的にせよ無自覚的にせよ、生者の側に抜き難く埋め込まれていて、そこから逸脱したリアルを伝える言葉が退けられている感じがする。
とはいえ、その言葉を語る人が「嘘を吐いている」と断じるのもここでは間違っている気がして、なんとももどかしい。このもどかしい感じが「上手いな」と感じた次第。
一話だけなら「意図してついた嘘」で戦争の悪いところ、という感じだけども、2巻のまで合わせると、これを嘘と呼ぶのはあまりに・・・ってなるのがとても上手い。
※盛大にネタバレなのでもう一回反転。
連載継続中なのでこの先も楽しみです。
※作者の対談も参考になります。
触れられてる「総員玉砕せよ」は本当にいいぞ。これもマジで読むべき。

総員玉砕せよ!―戦記ドキュメント (SHUEISHA HOME REMIX)
- 作者: 水木しげる
- 出版社/メーカー: ホーム社
- 発売日: 2007/08/06
- メディア: ムック
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